手水・参拝の作法

稲荷とキツネについて

稲荷神社には必ずキツネの置物があります。
イナリの『イ』は生命 『ナリ』は成る。生成の意と捉えることができます。神名もウカノミタマの神・ウケモチの神・トヨウケの神・ミケツ神など稲荷神社によって異なりますが、その名から受け取れる大いなる働きは同じです。

ウ(産)カ(食物)ミタマ(魂)【食物生成の魂の神】・ウ(産)ケ(食物)モチ(もたらす)【食物の恵みをもたらす神】・トヨ(豊)ウ(産)ケ(食物)【豊かに食物を生みなす神】・ミケ(食物)ツ(世界(この世・現世)と世界(あの世・神世)の接点)【食物をこの世界にもたらす神】と読み取れます。

このことからイナリ神は五穀の神、農業神として、生活の基本『食』の神として崇拝されてきました。また、イナリ(生成)の御神徳は生成発展の神ともされ、家運隆昌・商売繁盛・技芸上達など様々なご利益があり、特に稲荷信仰の盛んであった江戸時代には武家・庶民の隔てなく多くの人々に信仰、御祈願されました。
その祈りを神様に届ける役がキツネです。キツネは稲荷神の眷属(けんぞく)・お使いとされてきました。

キツネは春と秋、里でその姿を見かけます。早春、山より先に里は水温む春を迎え、小動物も里に現れます。キツネは小動物を捕らえに山から里にやってきます。また、秋は穀物が実り、その穀類をねらって小動物が、そしてキツネがやってきます。つまり、田植えの時期と稲穂の収穫の時期に山からやって来る動物なのです。穀類をねらうネズミなどを捕らえる益獣でもありました。いつしか、キツネは山神様と里を結ぶ神様のお使いとされたのでしょう。キツネに五穀豊穣の祈りや収穫の感謝を託し、神様の元に気持ちを届けてもらったのです。キツネの体毛が収穫期の稲穂の色に近いこともあったのでしょうか。キツネはケツネです。ケ(食物)ツ(この世にもたらす)ネ(大地)【この世に大地より食物をもたらす】そんな名前とも解釈できます。
古代日本民族の感性に思いを馳せこんな解釈をするのもおもしろいですね。